大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)1283号 判決

被告人 膳棚弘太郎

〔抄 録〕

次に被告人が原判示三、のT振出、金額八万五千四百円支払人株式会社朝日信託銀行渋谷支店の小切手が不渡となることを知悉していたことは、原審証人Tの原審公判廷における供述に依りこれを認めることができるのであつて、被告人等が右小切手を原判示三、の銅板代金の支払のためM金属株式会社社員A、同B等に交付した以上、同人等はその小切手が株式会社朝日信託銀行渋谷支店において支払われるものと信ずるのは当然であるから被告人等が右小切手の不渡となるべきことを知りながら、これを代金支払のため取引の相手方に交付するにおいては、被告人等が所論のように右小切手が銀行にて支払われるものと申し向けたことがないとしても、代金支払を受け得るものと誤信せしめた欺罔行為を施したものといわねばならない。しこうしてA、B等が所論のように右小切手について支払人である朝日信託銀行渋谷支店に電話照会し、振出人と取引があり支払をする旨の電話回答を得たとしても、右の回答は何等かの過誤によるものであり、これと被告人等の右の欺罔行為と相俟つて同人等を錯誤に陥入れ被告人等に原判示三、の銅板を交付したことが原判決引用の証拠に依つて認められるのであるから、被告人等は詐欺既遂の刑責を免かれることができないものであつて、所論のように詐欺未遂犯に止まるものではない。しからば、原判決には所論のような事実誤認、理由不備、又は法令の適用を誤つた違法はなく、論旨はいずれも理由がない。

註 原判決の認定した第三事実は、「被告人は、三、新城某、林某等と共謀の上昭和二十六年一月五日頃同都港区芝浜松町四丁目十七番地所在松井金属株式会社において同会社員新井清、同加藤松男等に対し銀行に資金がなく且つ小切手の金額を確実に支払う意思がないのにこれあるものの如く装い田辺権次郎振出に係る金額八万五千四百七十円、支払人株式会社朝日信託銀行渋谷支店の小切手一道を以て銅板を売つてくれ旨申向け、新井、加藤等をして確実に右小切手の支払を受け得るものと誤信せしめ、因つて即時同所において同人等より売買名義の下に右松井金属株式会社所有の銅板二百五十九瓩の交付を受けてこれを騙取したものである。

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